経済産業省・生産動態統計による日本の2018年化粧品販売金額は、過去最高の1 兆7,255億円(前年比5.7%増)、2012年以降7 年連続で成長しています。資生堂、花王、コーセー、ポーラ・オルビス、マンダムの5社で市場全体の約88%が占有されており、日本人消費者の減少は見られるものの、外国人観光客のインバウンドにより市場は拡大傾向にあります。しかし、インバウンドの恩恵を受けているのはごく一部で、全ての企業に恩恵があるというわけではありません。フェイスマスクや紙おむつのようにインバウンドで人気のある商品もありますし、インバウンドの対応ができているか?ということもあります。
日本上位5社の化粧品企業数値情報
株式会社資生堂
・売上:1兆948億円(海外:64.0%)
・営利:1083億円(2018年12月)
花王株式会社
・売上:1兆5080億円(海外:21.8%)
・営利:2077億円(2018年12月)
*化粧品以外の数字含
株式会社コーセー
・売上:3329億円(海外:27.9%)
・営利:524億円(2019年3月)
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
・売上:2485億円(海外:全体開示無)
・営利:394億円(2018年12月)
株式会社マンダム
・売上:789億円(海外:34.6%)
・営利:71億円(2019年3月)
中国での日本の化粧品需要とは?
中国における化粧品の輸入額を国別にみると、2018年の1位は韓国、2位は日本、3位はフランス、4位は米国、5位は英国の順に続きます。韓国からの輸入が最も多い理由は、欧米や日本の化粧品に比べ価格面で優位性があること、韓国ドラマなどコンテンツの普及で韓国ブランドが身近な存在になったことが挙げられます。2位の日本は中国人の肌質と相性が良いことに加え「安心・安全なイメージ」があるためだと考えられます。それでは、中国以外のアジア各国での状況はどのようなものなのでしょうか?
インバウンドを含め、年率数%で経済成長するアジアをはじめとする海外市場は、非常に魅力的です。フィリピンやベトナムなど開発途上の国々も、年々成長しています。時間がたてばたつほどビジネスチャンスは減少し、事業を展開するコストも上がるため、スピーディーに海外進出を果たすことが大切です。先進国の多くは、少子高齢化、消費市場の飽和などの社会情勢によって経済の停滞にあえいでいるのが現状です。世界の化粧品売上ランキング20位までを見ると日本企業は3社にとどまっていますが、アジアのドラッグストア『Watsons』などを見ると、日本ブランドがいくつか定番として陳列されています。
グローバル展開している化粧品会社の売上比率

ここで、各社の動向を見てみましょう。日本最大の化粧品メーカー資生堂は第7位。海外売上高比率は年々伸長しており、世界88の国と地域で販売されています。2008年国内が4239億円、海外2788億円に対して、2015年では国内2688億円、海外4788億円と逆転しました。中国専用ブランド「オプレ」の再生にも取り組むなど、中国を中心に戦略の再構成を行っているようです。また、ベトナム、ギリシア、トルコなどに海外子会社を設立し、海外進出に一層力を入れています。2016年米化粧品メーカー、ガーウィッチ・プロダクツを買収。ガーウィッチは「ローラ メルシエ」や「リヴィーブ」といった高級品ブランドラインを持ち、全世界で販売されており、買収額は250億から300億円程度であったようです。ガーウィッチはメイクアップ及びスキンケアを中心とするブランドを展開しており、欧米で人気があります。特に米州ではメイクアップ市場の成長が大きく「ローラ メルシエ」を中心に大きな拡大が見込まれています。
動画:2019/02/12
第9位の花王は、言わずと知れた日本を代表する家庭用品メーカーです。グローバル戦略ブランドとして11ブランドで事業展開、中でも特にプレステージ領域に注力し、カネボウ化粧品が欧州で展開する「SENSAI」のグローバル化を加速させています。日本を含むアジア・欧州で成長を続けており、2020年には売上3,000億円以上、営業利益率10%、海外売上比率25%を目指しています。グローバルでは中国を中心とするアジア市場の力強い伸長を見せています。カネボウ化粧品の100%子会社であるエキップが展開するプレステージブランド「RMK」「SUQQU」や、花王の乾燥性敏感肌ケア「キュレル」、カネボウ化粧品の「フリープラス」「KATE」が、日本・アジアで好調に売り上げを拡大しています。日本製の「キュレル」については、日本、アジアにとどまらず、2019年以降欧米での事業展開を計画中。「フリープラス」は、好調な中国に加えて、アジア全域でのブランド強化を加速させています。「KATE」は、アジアNo.1メイクブランドをめざし、アジアでのリアル店舗の拡大を推進しているようです。
第18位のコーセーは年商3329億円、海外売上比率は27.9%。日本の高級化粧品の代名詞的存在で、化粧品事業は高価格帯のハイプレステージ、中価格帯のプレステージという2。ロングセラー商品は「雪肌精」をはじめ、「エスプリー」「米肌」などがある。「エクサージュ」「イグニス」「アナスイ」などの人気ブランドを育てたグループのアルビオンのほか、買収した米タルトなどが好調です。海外進出では、2007年にアラブ首長国連邦、ミャンマーで販売を開始し、中東諸国を視野に入れた販売戦略を展開。今後は「デコルテ」といったブランドの設立や新たな販売チャネルを発展させ、海外売上高を上昇させる戦略で進行しています。4月末に発表した2026年度までの経営ビジョンでは海外売上比率を現在よりも35%にする目標を掲げています。洗顔やクレンジングの「ソフティモ」、シートマスクの「クリアターン」、リップスティック「ヴィセ」などを、コンビニやドラッグストアで手頃な価格で提供しており、一連の商品群のうち、「デコルテ」「雪肌精」「ジルスチュアート」「アディクション」「クリアターン」の5つを重点グローバルブランドと位置づけて世界で拡販しています。
世界TOP20位にランクインこそ逃したものの、日本の売上上位にランクインするのがポーラ・オルビスホールディングス。創業は1929年、静岡県で創業者の鈴木忍氏が、手が荒れた妻のためにハンドクリームをつくったことが「POLA」のはじまりでした。訪問販売を通じて成長を遂げ、通信販売による新しい販路の開拓をめざして「ORBIS」ブランドを立ち上げ、2010年の株式上場後、米国のH2O Plusグループ、オーストラリアのJurliqueグループを買収、美容と健康分野のグローバル企業として成長を続けています。2020年には連結売上高2500億円、海外売上高比率20%以上、営業利益率13~15%の「高収益グローバル企業」をめざしています。国内で更なる収益基盤を強化し、営業利益を拡大させるほか、海外展開を加速させると考えられています。
最後にご紹介するのが、所得水準の上昇や流通の変化が起きているインドネシアを中核にした海外事業で成長しているマンダム。海外売上比率は34.6%と高く、インドネシア市場の重要性・成長性を鑑み、これまでひとくくりであった海外事業を「インドネシア事業」と「海外事業」に分け、海外の2018年3月期の成長率は7.1%。インドネシアに関しては、インドネシア国内のマス中間所得層をコアターゲットとしたマーケティングでビジネスを展開。
海外各国の所得レベル、消費レベルは着実に上昇しており、この上昇に乗り遅れないように成長加速を考えた結果により、上位5社の平均海外売上比率は37%。ビジネスインフラが整い海外進出のハードルは下がり、大手化粧品会社のみならず、中小企業であっても海外市場を視野に入れて動きやすい時代になりました。自社にはまだ早いとゆっくり考えているうちに、日本のライバルだけでなく、他国のライバル含めて先を越されてしまい、気付いた時には“諸外国における日本化粧品の飽和状態”が発生すると考えられます。いざ海外進出を始めようとしてもすぐに始めれるものではありません。是非情報収集から始め、まずは助成金を利用して展示会に出て自社のポテンシャルや課題を発見することをお勧めします。

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