2019年:国内性別による平均年収 

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女性の社会進出が進んでいる一方で、まだまだ年収格差は存在し、その差が狭まる兆しは見えていません。収入格差を改善するためには、具体的な施策が必要不可欠です。

2019年男女平均年収 
男性)545万円 (女性)293万円

女性の活躍の場は増えている?

近年は共働きの家庭が増えています。それを象徴するように、結婚・子育てを経て活躍する女性起業家、女性役員・管理職増え、女性の活躍の場は広がっています。日経MJの記事によれば、日本ロレアルが女性管理職比率をこの5年間で25%から倍の47%にまで引き上げたという事例もあります。グラフをみると、「共働世帯数」と「女性の給与所得者数」は右肩上がりで、「働くことで自分を磨く」「晩婚化」「男性一人の収入だけでは家計を支えきれない」など、働くことへの女性の意識の変化も見てとることができます。「クラウドソーシング」「ノマド」「ブロガー」「アフィリエイター」というような新しいキーワードの認知、女性の働き方の選択肢も増え、環境が整い始めているものの、男性平均年収は545万円、女性293万円と所得の格差は縮まっていません。これは、女性が専業主婦からパート非正規雇用者として扶養の範囲で働く数が多いこと、起業家や管理職といった年収が高いポジションは男性がまだまだ多いことが要因です。しかし、「産休の活用」や「女性の管理職」が増えている傾向から、今後この格差は縮まっていく時代になると考えられます。

昇進の有無に伴う収入格差

男女の賃金格差の理由は、昇進が女性に少ないことによる違いが主だと考えられます。日本では、課長以上の女性は6.6%しかいません。年収分布をみても400万円以上女性社員は急減。大手企業の課長職になると700万円程度はもらいますが、700万円以上の女性はたった3.9%です。昇進を望まない女性が多いのも事実。従業員300人以上の企業の非管理職層の女性で「課長以上の昇進希望あり」とアンケートに答えた人は10.9%。男性の59.8%に比べてかなり低い数字です。その主な理由は「仕事と家庭の両立が困難になる」「周りに同性の管理職がいない」というもの。ここでも退職女性と同じ事情が立ちはだかります。管理職になれば多忙になり、プライベートを犠牲にせざるをえないことを女性たちはよくわかっている。実際に女性管理職の約7割は子どもがいないという調査もあるほどです。 

女性を取り巻く社会環境

女性管理職が子どもを持たないという点については、「仕事と家庭・育児の両立」が難しいという現状の表れとも言えるでしょう。例えば待機児童問題が挙げられます。厚生労働省によると、2018年の待機児童数は前年比では4年ぶりに減少に転じたものの、全国でなお計2万人近くいます。202010月から始まる国の幼保無償化に先駆けて独自に保育料を無償化したことで入園希望者が膨らみ、待機児童が倍増しました。ただ、このほかに、認可保育園に落ちても、待機児童として数えられない「隠れ待機児童」が、全国で計約7万1千人いることが分かっています。 現状では、子どもをもうけることで「働きたくても、働きに出られない」といった問題が生まれる可能性が高く、女性個人の力ではどうにもならない不可抗力の要素が大きいのは事実。待機児童問題の改善は、社会全体で取り組んでいく必要がある事案のひとつです。

出産後も社会復帰できる世の中へ

出典:「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び出産・育児と女性の就業状況について

女性の平均年収は、男性のおよそ半分。同じ女性でも業界によって、あるいは同じ業界内でも企業によって給与は大きく異なります。政府と産業界が一緒になって女性の活躍を進めようとしていますが、その一方で、約6割の女性が出産・育児で退職していくという現実があります。働き続ける場合でも、女性の年収は平均293万円と低水準のまま。男性の年収が年齢とともに右肩上がりに上昇しているのとは対照的です。最大の理由はパート・アルバイトなどの非正規社員が多いことであり、女性の就業率は3539歳を底に再び上昇しますが、その大半が非正規での就業です。当然ながら正社員が多い男性との賃金格差が縮まることはありません。出産後の職場復帰で見ると第1子出産前後に女性が就業を継続する割合は、これまでは4割前後で推移していましたが、最新の調査では53.1%となっています。育児休業制度を利用して就業を継続している(しやすくなった)という状況は大きな前進かもしれません。雇用形態は変化し、出勤しないで自宅作業を取り入れる企業も増えています。 

男女収入差はまだまだ大きな差があることは否めません。しかし、労働者不足と言われる日本において女性の社会進出は必至。それに伴う「女性が働きやすい環境づくり」は国の発展において不可欠です。収入格差をなくすこと、女性が働く環境を整備することは、社会が一体となって取り組んでいくべき大きな課題であることに間違いありません。