新型コロナウイルス感染拡大を受け、政府が外出自粛を要請したことで、消費者が自宅で買い物をする「巣ごもり消費」が活発化しています。総務省が公表した「家計消費状況調査(2020年7月分)」によると、7月のネットショッピング利用世帯(2人以上の世帯が対象)の割合は、50.6%を記録し、前年同月比で7.5%増加しています。
そこで今回は、「巣ごもり消費」の活発化に伴い、食品業界でのEC利用にどのような変化が起きているのかを整理してみました。

「巣ごもり消費」で売れるモノとは
新型コロナウイルスの影響によって外食、旅行、イベントなどの「コト消費」は激減しました。代わりに、どのような商品やサービスが需要をのばしているのでしょうか。株式会社エヌケービーが2020年4月に実施した「巣ごもり消費」に関する調査*によると、消費者のニーズや意識は、7つに分類できると報告されています。タイプ別にその特徴と需要のある品目例を以下のとおりまとめてみました。
タイプ名 | 特徴 | 需要のある品目例 |
1. おうち時間充実型
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自宅での時間を豊かで充実したものにしたいというニーズ
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お取り寄せグルメ、
宅配サービス、 動画配信サービス |
2. エクササイズでストレス発散型
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運動不足・ストレス発散のため、体を動かしたいというニーズ
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エクササイズDVD、
運動機器、 運動系ゲームソフト |
3. 趣味に没頭エンジョイ型 |
インドア系の趣味・コンテンツを楽しむ意識
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ゲーム周辺機器(本体・ソフト・ディスプレイ・マウス等)
電子書籍 |
4. 趣味&実益を兼ねた手作り型 |
時間・手間をかけた実益を兼ねた趣味に興じている
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ハンドクラフト用品、
手芸用品、電気調理機器、料理本、スパイス |
5. 自己投資・スキルアップ型 |
余暇時間に自己研鑽に励んでいる
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オンライン講座、テキスト、
オンライン証券、 投資関連商品 |
6. 自分見つめ直し型 |
断捨離など自分の生活の見直し・整理している
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掃除関連用品、
フリマアプリ |
7. 癒し・リラックス型 |
不穏な日々の中で、癒し・リラックスへの希求
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ペット関連用品、
癒し系グッズ、アロマテラピー、マッサージ機器 |
この中で、食品業界と関係するのは、「おうち時間充実型」と「趣味&実益を兼ねた手作り型」になります。実際には、1つのタイプに決められるのではなく、様々なタイプを組み合わせた形で「巣ごもり消費」を実践している方が多いようです。
* 参考:食や娯楽サービス初利用、運動不足解消、自己投資など 7つのタイプ別消費~ 傾向を組み合わせて消費、軽率購入の後悔も ~| NKB INC.
飲食店はテイクアウト、宅配、EC販売へ
新型コロナウイルスの発生により、変化したのは消費者のニーズだけではありません。事業者にとっても大きく経営環境が変わりました。中でも、飲食店は夜の営業時間短縮を要請されたり、感染を恐れて客の利用が減ったりと、今なお厳しい状況におかれています。緊急事態宣言後、営業自粛も解消され、通常通りの営業を実施することができるようになりましたが、「新しい生活様式」「感染症対策」「第二波への警戒」などのワードが日々飛び交い、客足はまだまだ戻る気配がありません。
このような状況の中、withコロナを踏まえて、オンラインショップやECを利用した営業を開始するケースが増えてきています。
事例1:「Bistro plein」
2ヵ月間の完全休業を経て、オンラインショップを新事業の柱に
4、5月は店舗を完全に休業し、オンラインショップ営業に舵を切ったビストロの取り組みです。休業に伴い廃棄の危機にある提携農家の野菜2,000kgを自社で買い取り、オンライン限定でキッシュを販売しました。僅か10日で1,500個のキッシュを販売。その後、シャルキュトリー(食肉加工品)のオンラインショップをオープンしています。
オンラインショップ: https://bistroplein.official.ec
事例2:「パンとエスプレッソと」
冷凍パンのEC販売を開始
表参道をはじめ、国内に17店舗のベーカリーカフェを展開している「パンとエスプレッソと」は、4月から、自社ECサイトにてパンの販売をスタート。ECサイトでは、人気の食パンやフレンチトーストをはじめ、様々なパンを展開しています。これまで店舗に来れなかった人にも買える様になったことから、売れ行きは好調のようです。
オンラインショップ:https://bread-espresso.shop/
事例3:「塚田農場」
供給がストップした食材を活用し、人気メニューのミールキットの販売を開始
「塚田農場」をはじめとする居酒屋や飲食店を展開する株式会社エー・ピーカンパニーは、契約農家が生産する地鶏を消費者に直接届けるECサイト「おうち塚田農場」をオープンしました。居酒屋「塚田農場」の人気メニューもミールキット化し、販売しています。一部商品はオイシックスとも連携して販売しています。
オンラインショップ:http://ouchi-tsukada.com/
コロナをきっかけに、食品業界全体では『DtoC』の需要も増加
DtoC(D2C)とは、メーカーが自社開発した商品を代理店や店舗を通さずに直接自社のECサイトで販売するビジネスモデルのことです。コアなファンさえいれば、継続して利益が出ることもあり、DtoCによって「サブスクリプション方式」での販売も容易に実現できるようになりました。最近はコロナの後押しもありDtoCで食品を購入するという需要も増えています。DtoCで成功しているブランドをいくつか紹介します。
BASE FOOD
BASE FOODのコンセプトは、”1食で1日に必要な栄養素の1/3がすべてとれる完全栄養の主食”。サブスク方式をメインに、「BASE PASTA」と「BASE BREAD」を販売しています。ここ数ヶ月の間に在宅勤務をする人が急増したことから、ランチ用に定期購入を始めたお客さんも多いというこです。必要な栄養を手軽に摂取できることから、シニア世代の利用も多いそう。炭水化物の塊というイメージのパンやパスタを、必要な栄養が取れる食材に変えてしまったBASE FOOD。今後もますます需要は高まりそうです。
オンラインショップ:https://basefood.co.jp
Mr. CHEESECAKE
ECで完全受注販売を行うチーズケーキブランドのミスターチーズケーキ。販売も週に2回のみで、あっという間に完売となる人気ぶりから「幻のチーズケーキ」として人気を集めています。決して安くはないお値段ですが、最近は”おうち時間充実型”として食事時間を充実させるためにECを利用する消費者も増えていることから、ご褒美で購入する人も増えているようです。
サイトには作り手の思いやこだわりなど、ブランドの魅力がたっぷりと詰め込まれており、噂を知らない人でも思わず購入したくなる構成になっています。DtoCにおいては、このように消費者の共感を呼ぶためのストーリー性も重要で、同ブランドは食業界のDtoC成功例としても有名です。
オンラインショップ:https://mr-cheesecake.com
まとめ
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、売れ行きが落ち込みに注目が集まりがちな食品業界ですが、一方ではECをうまく活用することで需要を伸ばしているサービスも多くあります。
EC販売以外でも、食事の宅配サービスなどは利用者の満足度の高さから一気に認知が広まり、今では幅広い世代で使われるようになりました。このようにネット販売の導入で「巣ごもり消費」がより充実化していくという流れは、アフターコロナにおいて一般的な買い物スタイルとして定着するのではないでしょうか。
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