WithコロナとAfterコロナ視点で考えるEC戦略

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新型コロナウイルスをきっかけに、思わぬ形で世の中はオンラインにシフトしてきています。未だに先行きが不透明な中、それでも様々な業界で売上げの確保は急務となっています。アフターコロナを見据えて、オフラインとオンラインの両方で収益を維持、拡大するために今やるべきEC戦略について、今伸びている業界や事例を紹介しながら解説します。

今EC市場で伸びている業界とは

経済産業省の調査によると、2019年の日本国内のBtoCにおけるEC市場規模は、19.4兆円(前年比7.65%増)に拡大しています。国内大手ECサイトを運営する楽天株式会社は、2020年度第1四半期決算の中で、ショッピングEコマース流通額が前年同期比+57.5%であったことを発表しました。新型コロナウイルスによる巣ごもり消費拡大の影響も受け、より一層EC需要が高まった結果です。

これに対し、店頭企業の売上げの下げ率は高く、平均して−60%という統計結果も出ています。このように、コロナ禍を受けてさらに発展をみせるEC市場ですが、その中でも特に今伸びている業界とその特徴について、2020年7月に経済産業省が発表した国内電子商取引市場規模(BtoC及びBtoB)の調査結果*を元に解説します。

物販系分野

物販系分野では、「②生活家電、AV機器、PC・周辺機器」が今伸びている業界の一つと言えます。全体の中でも伸び率が最も高く、昨年比10%を上回っています。最近ではお家時間を充実させるために調理家電やハイスペックな家電などを購入する人が増えました。家電は、型番や製品名が分かればどこで買っても品質に変わりなく、安さを求めてWEBで探す傾向が強いので、ECに向いています。ただし実際は、消費者は実店舗とWEBを往来し意思決定を行うことが多く、ECと実店舗の連携を重視する家電量販店も増加しています。

一方、商品の鮮度が重視され、コンビニやスーパーなどの実店舗との競争になりやすい「①食品、飲料、酒類」は、一般的に通販が難しい分野とされています。EC化率も2.89%と他分類と比較して低いです。しかし、最近ではネットスーパーの利用率が全般的に伸びており、ミールキットの定期宅配といったトレンドも加わって、市場規模は拡大しています。コロナによる外出制限や、共働き夫婦の増加による家事の簡素化を求める社会的背景も手伝い、今後も市場は伸びると考えられます。

最後に、市場規模で最も大きな割合を占めている「⑥衣類・服装雑貨等」については、アパレル企業の多くが「販売チャネルのデジタル化」を進めていることが影響しています。特にSNSの活用は顕著で、コーディネートの提案やインフルエンサーの起用、動画による新商品の紹介など、積極的に利用してECサイトに繋げる企業が増えてきました。また、外出制限をきっかけに、店舗に行かずにライブ配信を見て質問し、購入する新たなスタイルが若い世代を中心に浸透しています。こうした取り組みを行っているアパレル企業は、コロナ禍でもECの売上げを大きく伸ばしています。

サービス系分野

サービス系分野においては、「②飲食サービス」「③チケット販売」「⑤理美容サービス」の伸び率がいずれも昨年比10%を上回っています。

「②飲食サービス」については、ネット予約のフードデリバリーやテイクアウトサービス拡大が大きく影響しています。コロナ禍前からこの市場は拡大していましたが、昨今の自粛生活をきっかけに、外食せずにデリバリーを頼み自宅で食事を楽しむ人は更に増えました。そして、この食文化はアフターコロナにおいても定着すると考えられているため、フードデリバリーやテイアウトといった「飲食サービス」のEC市場は今後も大きく飛躍しそうです。

「③チケット販売」は、東京オリンピック・パラリンピックのチケット販売が数字に大きく影響したといえますが、ネットとの親和性が高いカテゴリーの一つです。転売防止と新型コロナウィルス感染拡大予防の二つの側面からEC化が進んでいます。最近は、チケットの転売を防ぐため本人確認を必要とするケースが増えていますし、電子チケットをスマートフォンに登録することで他人への譲渡ができなくなる仕組みも取り入れています。また、チケット販売数の制限や来場者数の把握、チケットの非接触化は新型コロナウィルス感染拡大予防策としても求められており、これらを可能にする電子チケットの需要は高まっています。

前年からの伸び率でもっとも高かったのは「⑤理美容サービス」です。このカテゴリーには「ヘアサロン」「ネイルサロン」「エステサロン」「リラクゼーション」「アイビューティ」が含まれています。市場が伸びた要因としては電話予約に加えて、ネット予約できる店舗が増加したことによります。

デジタル系分野

デジタル系分野においては、「①電子出版(電子書籍・電子雑誌)」「③有料動画配信」の二つが大きく伸びています。

「①電子出版(電子書籍・電子雑誌)」については、社会問題化していた海賊版サイトの閉鎖以降、電子書籍の認知度向上と正規サイト利用促進が進み、売上拡大が続いています。

そして、今後ますます需要が高まるであろうと予測されるのが「③有料動画配信」です。前年比62.76%の成長率で大きく伸びています。スマートフォンによる視聴の定着化、TVCMなどのプロモーション強化、話題となるオリジナルコンテンツが相次いで配信されていることなどから、利用者が増えていると考えられます。加えて、外出自粛による巣ごもり需要の高まりや5Gの普及から、今後も市場は更に拡大すると予想されています。

*参考:電子商取引に関する市場調査の結果|経済産業省

ECサイトの種類

ECサイトには、モール型ECと自社ECの二種類があります。以下にそれぞれの特徴とメリット、デメリットを説明します。

モール型ECとは?

モール型ECとは、複数のショップが集まって一つの大きなショップを形成しているECサイトのことです。インターネット上の百貨店と考えれば分かりやすいかもしれません。日本では、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングが代表的です。

モール型ECのメリット

① 集客力がある

モール型EC最大のメリットは集客力があることです。Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングは月間利用者が数千万人単位で存在します。すでに人が集まっている場所で商売を始められるため、自社ECサイトを立ち上げる場合に比べて集客にかかる負担は軽減されます。

② 初心者でも簡単に始められる

モール型ECでは、既存のプラットフォームを活用できるため、独自ドメインを取得したり、ECサイトのデザインを考えたりする手間が省け、簡単に出店することができます。

モール型ECのデメリット

① 出店料や手数料がかかる

テナント料、運営コスト、広告料、売上に応じたロイヤルティなど継続的にかかる費用が発生します。

② ショップのブランディングが難しい

モール内ではデザインが統一され、商品検索では他店の商品と一覧で表示されます。そのためショップ自体の個性が出しにくく、ショップを覚えてもらいにくいという短所があります。

③ 顧客情報が取れない

モール型ECでは顧客情報はモール側の所有物となり、各ショップが顧客リストにアクセスすることは基本的にはできません。顧客情報をもとにマーケティングを行いたい場合には、モール型ECはあまり向いていないでしょう。

自社ECとは?

自社ECとは、独自ドメインを取得して個人のネットショップを運営するECサイトのことです。自社ECの構築方法は複数あり、デザインや機能の自由度、制作コストなどはそれぞれ異なります。

自社ECのメリット

① 企業や製品のブランディングができる

構築方法にもよりますが、一般的に自社ECの方が希望に合わせてオリジナルのシステムを柔軟に作ることができ、追加の開発や改修も自由です。独自ドメインやデザインを活かして企業や製品のブランディングができるのは自社ECの大きなメリットです。

② データ活用がしやすい

さまざまなデータを自由に収集できる点もメリットと言えるでしょう。アクセス解析のデータは、ECサイトの改善や効果的なプロモーションといったマーケティング戦略を立案し、実行する際のベースとなります。購買データや顧客データをうまく活用できれば、リピート率を上げる施策を打つことができます。

自社ECのデメリット

① 集客を自社でしなければならない

自社でECに集客するには、SEOやリスティング広告を含めたWEB広告などのマーケティング知識が必要です。書籍やセミナーで学ぶこともできますが、コンサルティング会社のサービスを利用しながら知見を身につけていく方法もあります。また、最近ではSNSをうまく活用して集客に成功している企業もあるため、SNSマーケティングも合わせて活用すると効果的です。

② ECサイトの運営に主体性が求められる

自社でECサイトを運営する場合、集客をはじめとして様々な販売活動を主体的に行う必要があります。ショップをどのようにブランディングしたいか、リピーターを増やすにはどうしたらいいかなど、長期的なビジョンを持ってECサイトを運営しなければ、自社ECを成功させることは難しいでしょう。

モール型ECか自社ECで迷ったときは?

商材で考える

「欲しいもののジャンルは決まっているけれど、具体的にどの商品を買うか決めかねている」という方は、モール型ECを利用する傾向があります。モール型ECの検索機能を使えば、類似商品と比較した上で購入することができるからです。そこで、大衆商品や消耗材を販売する場合は、買い手がたくさん訪れるモール型ECに出店すると良いかもしれません。

一方、ブランド品や専門品を求めて買い物をする方は、購入する商品がはっきりしているため、個々のショップのECサイトから直に購入することを好みます。ニッチな領域の商品を取り扱っている場合は、自社ECサイトを立ち上げてブランディングを行いファンを獲得し、リピート客や優良顧客を増やすと良いでしょう。

ビジネス展開で考える

ニッチな領域の商品を販売する場合でも、商品やブランドが世間に知られていない段階では、自社ECのみの展開に限界があります。そこで、自社が置かれた状況からモール型EC、自社ECどちらに出店すべきか見極める考え方もあります。事業を始めたばかりの時期はモール型ECの集客力を活用し、商品やブランドが認知されるようになったタイミングで自社ECへ移行するというのも一つの方法です。

モール型EC、自社ECを同時に運営するという選択肢もあり

実際のところ、両者同時に運営する企業も少なくありません。モール型ECは新規顧客獲得に向いています。一方、自社ECは、過去に商品を購入した顧客情報をもとにDMやメルマガを送ることでリピート客や優良顧客の育成に適しています。二つのサイトを同時に運営していくには、企業に基礎体力が必要ですが、間違いなく集客力を強化することができます。また、どちらかのECサイトにトラブルが発生した際のリスクヘッジとしても、両者を同時運営するという選択肢を考慮しても良いのかもしれません。

今やるべきEC戦略とは

EC市場は右肩上がりに伸び続けていますが、さらなるEC市場の活性化と、自社のオフラインとオンラインの両方で収益を維持、拡大するために今やるべきEC戦略について紹介します。

① O2O

O2O(Online to Offline)とは、オンラインからオフラインへ送客し、購買行動につなげるマーケティング方法のことです。O2Oの展開はECサイトから小売店への送客以外にも、交通・宿泊・飲食など、オフラインで消費されるサービスについても活用されています。例えば、Webサイト上で実店舗で利用できるクーポンを配布する、SNSでタイムセールの告知をして来店や購入を促す、オンラインサイトでの宿泊予約といったことが挙げられます。即効性のある、短・中期的なマーケティング施策として活用されることが多いです。

② オム二チャネル

オムニチャネルとは、顧客が商品を購入するにあたっての認知・情報収集・比較・検討・購入・サポートという総合的なプロセスにおいて、オンラインとオフラインの区別を無くすことを意味します。例えば実店舗において商品を認知し、インターネットで情報収集を行い、口コミサイトを参照しながら比較検討し、ECサイトや実店舗において購入。購入後はメーカーや店舗のサポートを受けます。この一連のプロセスで販売チャネルの境目を無くすことができれば、顧客満足度向上に繋がり、リピーターを増やすことができます。

事例1:無印良品

無印良品では、スマートフォンアプリの「MUJI passport」をオムニチャネル戦略の一環としてリリースしました。このアプリでは、無印良品商品のニュース配信や在庫検索などの機能に加え、実店舗を訪れるだけでポイントが加算されるマイレージプログラムをを搭載したことで、実店舗への流入数を増やしています。

事例2:ABC-MATRT

ABC-MARTがオムニチャネル戦略として取り組んだのが「サイズ問題の解消」です。ECサイトで選んだ商品を最寄りの店舗で試着・購入できる店舗受け取りサービスを開始しました。また、店舗に欲しい商品がない場合は、他の店舗の在庫を照会し、スタッフが取りに行くことも。近くの店舗にも在庫がない場合は、店頭タブレットでEC在庫を検索し、自宅配送を指定して商品を購入することも可能です。これにより在庫切れの機会損失を減らし、年間1億5000万円の売上創出に貢献しています。

③ 越境EC

越境ECとは、国境を越えて行われるEコマースのことです。冒頭に紹介した経産相の調査によると、世界の越境 EC 市場規模の拡大予測は2020年の9,123 億USドルから、2027年には4兆 8,561 億USドルまで拡大すると言われています。越境 EC の利用度について地域別に見ると、香港での利用度が最も高いという結果が出ています。日本製の商品は、その品質や安全性に定評があるだけでなく、海外では手に入らない物も多いため、海外の人々から多くの需要があります。日本からは中国向けに展開を進める企業も多くみられますが、中国消費者向け越境 EC は、市場参入企業数も多く、必ずしもが売上げ目標の達成が見込めるわけではありません。個人による購買力が高い UAEや今後市場が伸びると予測されているロシアや東南アジアなど、ポテンシャルが高いと予想される国も多く存在します。自社の商品との相性を見極めて国を選定する必要があります。

まとめ

EC市場は拡大しており、コロナによる外出自粛も追い風となって今後もまだまだ伸び代があります。店舗を持つ事業者にとっては、これまで以上にECとの両立が重要になっており、いかにユーザーにとって使いやすいサービスを提供していくのかが鍵となります。またSNSを活用してECに流すなど、時代やニーズに合わせた柔軟なマーケティングを取り入れる必要があります。

CROSS BORDERでは自社ECサイトの構築をはじめ、WEBやSNS運用を含めた総合的なマーケティング支援を行なっております。また、化粧品を中心とした海外販路開拓サービスも行なっております。

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